マリコ院長のときたまトーク

第7回「「やる気が出ない」についての考察(その1)前編」

私のクリニックには更年期の問題を抱えた患者さんも多く受診されます。多種多様な症状をお話しになりますが、最近私が気になっている症状(あるいは問題)に、「やる気が出ない」というものがあります。代表例はこんな感じです。

40代後半、月経は不順になる時もあるがまずまず1ヶ月に一回は来ている。子供、夫と暮らし仕事はパート勤務。病気は花粉症以外目立った病気なし。
「最近なんだか何もやる気が起きないんです。仕事には行けていますが、家事は必要最小限のみ。特に眠れないわけでも、食欲がないわけでもありません。これといって趣味はありませんが、好きなテレビ番組を見たり、時々ママ友とランチに行ったりはします。ストレスは無いと言ったら嘘になります。仕事でも、家庭でも。でも仕事は変わってからもう1年になって仕事自体には慣れているし、特に夫と仲が悪いということもありません。子供に関してはストレスはあると思います。生理が不順になることもあるし、そろそろ更年期症状が出ているためにやる気が出ないんじゃないかと思い受診しました。。。」

「やる気が出ない」と言って受診される方は、大抵それなりに生活が出来ていて、例えば部屋がゴミ屋敷になっているとか、昼夜逆転とか、酒浸りになっているなど生活が破綻寸前のような状態にはなっていないように見受けられます(実際ご家庭を覗いてないのでなんとも言えませんが)
「眠れない」「食べれない」「痛い」が強ければ大問題ですが、「やる気が出ない」と訴える方は、その点はそんなに逼迫した問題ではないことが多いです。 「やる気が出ない」を言い換えるとどうなるか。
「疲れやすい」「スタミナ切れ」「腰が重い」「一生懸命やる意義が見出せない」「何をしても虚しい」「集中力がない」などでしょうか。
「やる気」はイコール「意欲」ですね。「意欲」とは「ある物事を成し遂げようと思う積極的な気持ち」のことです。
そのような「意欲」というものが、更年期の女性は少なく弱くなってしまうのでしょうか?
この問題を考えるにあたっては、身体の問題と心の問題に分けて考える必要があります。
まず身体の問題として、教科書的な更年期の症状に「疲れやすい」というものがあります。
「若い頃は夜勤して次の日も普通に働けていたのに今は休まないと働けない。」「前は根を詰めて手芸など短時間に仕上げられていたのに、今は1つ仕上げるのに何日もかかってしまう」に類したことは、誰しも経験したことがあると思います。

更年期を心配され受診された方はホルモンのバランスがどうなっているかを採血で調べますが、月経が何ヶ月も来ていないような人以外は、女性ホルモンの値が低いわけでないことがよくあります。むしろ過剰に出ていることもあるくらいです。過剰に出ているから大丈夫とは言えません。更年期のホルモン動態は不安定であり、乱高下を繰り返し、たまたまホルモンがたくさん出ている時に採血した可能性もあるのです。そうした不安定なホルモンの動きに翻弄されいわゆる更年期障害としての疲れやすさが出ることは十分に考えられます。
さらには身体の老化による筋肉の衰え→姿勢の悪化→疲労感、あるいは老化による目の疲れ→疲労感に繋がり、それが「やる気のなさ」と捉えてしまう可能性もあります。

最近では「血糖値の乱高下」が問題視されるようになりました。体質的な要素も多分にありますが、糖質の多い食べ物(特に精製されたもの)を摂ると一気に血糖値が急上昇しさらには急降下しやすく、血糖値が急降下するとイライラ感、だるさ、眠気、不安感が増すということはよく知られるようになりました。
将来の糖尿病の予防のためにも糖質摂取の工夫が必要ですが、情緒安定や意欲の保持のためにも大変重要です。
「月経前症候群」という、月経前に種々の症状(前述した症状を含む)で苦しむ病態がありますが、月経前の「黄体期」は特に低血糖に対して敏感になりやすく、「月経前症候群」を更年期症状と思い受診される方も少なくありません。

〜続く〜